お代は見てのおかえり (2)

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蒼井×小早川 10/19

蒼井は膝裏に手を添えたかと思うと、俺の両脚を事もなげに割り広げた。 あまりの恥ずかしさに腕で顔を隠すと、蒼井はそれをやんわりと解き。 もの言いたげな表情で見下ろしてきた。 頬は上気してほんのり紅く色づき、目が心なしか潤んでいる。 ちらと視線を遣れば、蒼井のものはすでに立派に育っていて、 こいつも結構ギリギリなんだな、と 呆れたような、ほっとしたような。思わず口元が緩み苦笑が洩れた。
「…なあ、もう……」
俺が言うと、うんと小さな声が聞こえて、これでこの焦れったい愛撫から解放される。 互いに直接触って握って存分に扱いて。本能と快楽に身を任せ……と、思ったのも束の間。
「……ん……え?……えっ?……なっ……っ!      っく、ん」
蒼井はいつの間に用意したのか、生々しく血管が浮いている俺のものにローションを垂らした。 それが入り口にまで伝い落ちてきて。冷たさに身体が強張る。そしてすぐ後にローターが中に入ってきた。 振動は止まってるとはいえ、硬い異物が肉を掻き分けて入ってくる感触に内股が震えた。 違和感はあったが、浅い部分を過ぎてしまえば思ったほど不快じゃないのが困った。 ローションのおかげなのか、凹凸のないそれは難なく動いているようだが、ここだというところに進んでくれない。 もどかしい位置ばかりを行き来する。 刺激は小さいくせに、どうにも逃しきれない疼きが生まれる。背筋はぞくぞくして、鳥肌が立つほどなのに、 中はぐずぐずと蕩けそうに熱くて。額に汗が滲んだ。 俺の顔色を窺いながら、優しさなんだか意地悪なんだか。蒼井の指はけして急がない。腰が勝手に動いてしまう。 そうじゃない……もっと深く、もっと強く。 踵がシーツの上を滑る。懇願するような甘ったるい声が次々と零れてくる。
「……は、ぁ……ぁ…っ……あお、い」
名前を呼べば、蒼井はじいと俺の顔を見た。なりふり構わずがつがつしてて、獣じみた欲に塗れているはずなのに。 その瞳は白目に青みかかって、透き通っていてとても綺麗だった。
「小早川さん……すごい…エロい」
「はっ…は、あ?…………っ!!        あ、うっ、ぁああ」
突然、中のローターが動き出した。内側から弱い電流が流されたようだった。思わず爪先に力が入る。 背中が反り返る。そんな俺を見下ろしながら、蒼井は眉根を顰めて、少し切なそうに細く息を吐いた。 ったく。お前の方がよっぽどエロい顔してるっての。
「……中がもの欲しそうに動いてる」
「……はっ……は、ぁ……あ……んっ、んぅっ」
「指…締めつけてるよ」
「お、まえがっ……んな、ふうにっ……するからだっ…ろ……」
「……自分で…わかる?」
「ば、か…それ……やっ……あ…っ」
浅いところばかりを責められる。もっと奥。奥に欲しい。 ローターと蒼井の指を引きずり込もうと肉が捩れて、俺は引き攣った喘ぎ声を上げる。
「おい…っ…ほんと…マジ、で……やめろ、よ……」
「……え…?」
「言った、だろ……やだって」
蒼井がきょとんと目を丸くする。ああ、ちくしょう。 普段は滅多に見せないあどけない表情を、こんなときに見せられて。 愛おしいと思わないわけがないじゃないか。たしなめるつもりの声がつい優しくなっちまう。
「さっきから……俺ばっかり…だろうが」
「………あ」
「蒼井…な?……も……いいだろ?」
「……ごめん」
肩を落として小さな声でぽつりと言った後、蒼井はすでに準備万端のそれを自分の手で数回扱いた。 俺は額に張り付いた髪をかきあげながら、荒げた呼吸と圧倒的な快感への期待に打ち鳴る鼓動を宥めていた。 持ち上げられて腰が浮く。ああ、ようやく……ゆっくり息を吐いて蒼井を待つ。 いつの間にかすっかり慣れちまったもんだ、とそんな自分を頭の隅っこで嗤う。 蒼井の先走りとローションで濡れた先端が入り口を、この期に及んでまだ焦らすかのように 撫で回している。蒼井の首に腕を回して顔を引き寄せる。はやく、こいよ。と耳元に囁いてやれば、蒼井の喉がこくりと鳴った。
「……っ……小早川さん」
「……ん?…ぁ、あ!?……ちょっ……」
「………ぅ…」
「おい、ま、て……蒼井!まだ中に        ひっ、あ…あっ、ああっ!」
一気に押し入れられて圧迫感に仰け反る。肉が巻き取られていく感覚に全身が小さく痙攣する。 それだけならいつものことだし、一時の不快感を逃した先にある興奮を覚えているからさほど恐怖はないが。
「………ん、っぐ……やっ、はっ、あっあ……く…っ……あ…お、いっ」
まだ中で振動しているローターが、蒼井のものに押されて奥へ移動した。 今までのセックスならば張りだした括れが擦っているはずの、それよりずっと深いところで、 蒼井の熱とは違うものが暴れていた。目をきつく瞑れば目じりには涙が滲んだ。発光体が弾けて目蓋裏を白く焼く。 チカチカと明滅する光に包まれて、歯を食いしばったまま、俺は知らないうちに射精していた。
「……は……っは、あ……ばっ、か……おまえ…っ」
「……っ……すごい……な」
「こ、れ……取れ、って」
「どうして」
「は、ぁあ?……どうして、って……」
「小早川さん……イッたでしょ?……よかったってことだよね」
「…へ?……あ、いや……それ、は……」
「約束は……破ってないよね……これなら、おれも気持ちいいんだし」
「お…まえ……っ…ん、ん……」
そういうことじゃなくて、と言おうとした矢先に唇を塞がれて、止まっていた律動が再開された。 気持ちいいのは本当らしい。蒼井はいつもより熱く硬く大きい、ような気がする。ローターは動いているんだかいないんだか、 もう麻痺して判らなくなった。ただ、一向に形も変えず温度も変えない硬いままの塊が腹の中をずっと捏ねまわしていた。 蒼井は繋がったまま俺の身体を返して、背中に覆いかぶさった。 出し入れされるたびに肉が擦れて、卑猥な水音が聞こえた。蒼井は首に吸い付いてきた。肉を甘く噛んだ。 それはやがて肩や背中に下りてきて、萎えてどんよりと沈んでいたはずの欲情にまた火をつける。
「…ば…っか……まだ、やばい……って………くっ…」
俺はシーツを手繰り寄せ握り締める。両脚の間にぶらさがっている俺のものを蒼井は手の平で包む。 腰をゆっくりとグラインドさせながら上下に竿を擦り、手首をきかせて括れを捏ねた。 射精した直後のそれは快感というよりチリチリと焼けるような痛みのほうが大きい。
「………も……イって、いい?」
力いっぱい俺の身体を抱き締めて、肩に顔を埋めて蒼井が言った。 濡れたようにしっとりと低く、甘い吐息混じりの声に、大きなうねりが下腹に集まりつつある。
「……いい………出して…いいっ……か、ら」
「………う、ん……っ……」
腰をがっちりと押さえ込まれて、最奥まで突き上げられた。俺は皺だらけのシーツに額を擦りつける。 シーツを掴んだ指先が震えていたが、それが自分のものだという感覚がない。 沈んでいるのか浮いているのか。どこからが蒼井の身体で、どこからが俺の身体なのか。 もうなにも判らない。あ……やべえ。切れ切れの呼吸に紛れてそう小さく呟いて。 そのあたりから記憶は途切れた。